【腎臓の場所と役割】
腎臓は腰の上あたりに左右2つあり、大体人の握りこぶし大の大きさをしています。
主な重要な役割は、体の中で出来た老廃物を血液から越しだし、尿をつくることにあります。
【腎機能が悪化すると】
血液中の老廃物の一つにクレアチニンという物質があります。
そのクレアチニンは腎臓から越しだされ、尿となってでていきますが、腎機能が悪化するとこのクレアチニンが十分に越しだすことができなくなり、血液中に残った状態が持続してしまいます。つまり体でできてしまった老廃物が尿から排泄が十分できず、血液中に長く存在することになり、これが腎不全の状態ということになります。
血液中のクレアチニンが高値ということは、腎機能が悪いということを表しています。
【腎不全の進行状況】
腎臓は比較的予備能力がある臓器であり、簡単に腎不全には至りません。ただし、一度失われた腎臓の機能・組織は特殊な状況を除いて回復・再生はしません。
下の図を参考に腎機能が低下してくる状況を御説明します。
100の老廃物の処理作業を100個の腎臓の細胞でこなすと仮定しますと、腎臓の細胞1個で1つの仕事をするだけでよいので、負担は少なく長期間(一生)の仕事に耐えうる状態がキープできます。しかし、何らかの理由で100個の細胞が80個の細胞に減ってしまうと1個の細胞の負担が1.25倍となります。その程度であれば何とか頑張っていけるかと思っていると、80個のうち疲れてくるものも出てきて、50個に減ってしまったとします。すると1個の細胞の仕事量は当初の2倍となってしまします。その後は時間とともにどんどん疲弊していくため、50個のうち10個、20個とその数は減って行ってしまいますので、後半は加速度的に腎機能は悪化し、代償出来ない状態 つまり腎不全に至ってしまいます。
【腎機能障害に対する治療】
先に述べたように、腎臓の細胞が失われると再生しませんので、残った細胞で必要な仕事をこなさなければなりません。
よって、我々が腎機能障害の際に行っている治療は、残った腎臓に対する仕事量を減らして、少しでも負担軽減をはかり、残った腎臓を大切に使っていくことです。つまり100あった仕事を80程度まで下げることで、一つ一つの細胞への負担を軽減します。決して減った細胞を増やしているわけではありません。
具体的には塩分を減らして、腎保護効果の高い降圧薬などで血圧を下げて、腎臓で代謝されるタンパク質の摂取を減らして、といった具合です。
残念ながら腎臓の細胞が半分になったからといって、仕事量を半分にはできないため、徐々に腎機能が悪化するのは避けられませんが、何もしないよりはずっと長持ちするのです。
長くなりましたが、これが腎臓の治療をしているにもかかわらず、クレアチニンが徐々に上昇してしまう理由です。
ここまでを理解すると、腎臓の細胞の数が減ってから治療するより、ある程度保たれている初期のころから治療を開始することが、その腎臓を長持ちさせることができる方法であると御理解いただけるのではないでしょうか。